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2024年7月の同朋の会

 浄土真宗は浄土を真の宗(むね)として、生活の根本としていただいていく生き方です。
 その「浄土」ですが、一般的に多い認識はこの世とは別にあの世としての浄土や地獄があるというものです。
 しかし真宗の「浄土」のいただき方は違います。パラダイスのような自分の想いをかなえてくれる世界ではないです。真宗における浄土とは本当の自分の姿が照らし出される世界です。
 私たち人間は日常の中で我欲・煩悩にまみれています。自分の中の優劣や好き嫌い等の価値観にこだわって生きている以上は必ず日常が地獄になります。ものさしを振り回して傷つけ合うことや違う価値観同士で争いごとになることが起こるのです。その上、煩悩にまみれている故に自分の有り様に中々気付けません。
 このような煩悩熾盛の存在である私たち人間ですけれども、いつでもどこでも阿弥陀如来や諸仏の方々は私たちにはたらきかけて下さっています。比べる必要のない阿弥陀の浄土をもって、それぞれの価値観を押し付け合って地獄に生きている私たちを照らして下さるのです。
 そして迷っていることすら分からない自分が、地獄に生きていると気付けることに恵まれたならば、「浄土」は本当に手を合わせる世界になりますでしょう。

(筆・釋裕香)