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2024年8月の同朋の会

  「天命に安んじて人事を尽くす」 


 当宗派の近代教学の祖である、清沢満之師の言葉です。当時不治の病であった結核を患い、病の身での生活の中から発されました。浄土真宗に力強く頷かれた、これぞ真宗という表現ですね。阿弥陀さまによって定まる世界に目覚めたなら、安心して迷える、安心して失敗できる。そしてその人のすべきことに尽力できる。結果に惑わされることはありません。そこにはホッとする温かさを感じます。 
 世間では、「人事を尽くして天命を待つ」が一般的です。一見似たように思えるかもしれませんが、意味は全く違います。この場合、人事を尽くす、にはその人の目標があり、それに向かってやる事をやり尽くした後は結果を待つ。いわゆる世間の美徳感から出た表現でしょう。目標があるから 周囲からの期待も含まれます。自分の中に既に良い結果を期待している部分があるのに、うまくいかなかった時 どうなるのでしょう。当然周囲の反応も気になるでしょう。自分に自信がある時に使う表現なのかもしれません。常に頭を上げて前に進んでいく姿があります。ここには温かさは感じられません。
 私達の生活の中心に 頭を下げ手を合わせお念仏を称える習慣があれば、自ずと後者の表現ではなくなるのではないでしょうか。


(筆・坊守 釋尼育英)